「麹菌」と「鰹節」と「出し汁」の話

『出し汁の話し』

余りコノ手の投稿はしない事にしてるんですが、程々な情報を垂れ流してる輩が後を立たないので、補正の意味で、正しい出し汁の引き方を投稿します。基本の基本なんで。

出し汁は、出しを取る、とは言いません。出し汁は『引く』と言います。

出し汁は、①一番出し、②二番出し、③雑出し(鯖節、アゴ節等)、④各種精進出し、⑤混合出し、等

①一番出しは、先ず、精進出しの、昆布出しを引きます。定量の湯冷ましに、定量の昆布を浸水し、一晩寝かせ、昆布を引き上げて、火に掛け、沸き端(わきばな、沸騰寸前)に火を止めて、定量の鰹節を入れて沈め、間髪入れずに濾した出し汁を、一番出しと言います。これは吸い物や土瓶蒸し、煮物椀等に使います。この場合の『定量』は料理屋のレベルで変わるかと思います。

②二番出しは、一番出しで濾した鰹節を、再び煮返して濾した出し汁で、煮物や丼等に使います。

一番出しは、上等な出し汁ですが、二番出しが安物と言う事はありません。

会席料理の献立を考える場合、味の起伏だけではなく、旨味の起伏も考えて献立を立てますが、一番出しと、二番出しの使い分けで、旨味の起伏を付けます。

毎日、大量の鰹節と昆布を使う場合は、一番出しを濾した鰹節を再び煮返して二番出しとしますが、そうで無い場合、鰹節のみで引いた出し汁を二番出しとしてもかまいません。

一番出しを引いた昆布は、干して貯めておいて、ある程度貯まったら、水元しして切り出して佃煮にします。

丼等に、一番出しは使いません。勿体無い上、丼に使う魚や肉類の旨味に、出し汁の旨味が負けてしまうからです。

日本料理で、旨味のバランスを考える場合、『旨過ぎる』と言う概念があり、会席の料理をお出しする流れも考えて旨味の起伏を考えますので、旨味の起伏を考えた場合、一番出しで、全てのお料理をする事はありません。

お出しする料理のタイミングと、目的とする料理に拠って、旨味の起伏を考えられるのが料理人です。

昔、料理の鉄人で、道場氏が『命の出し』と言って、バカスカ鰹節を使って出し汁を引いていましたが、あんなのはパフォーマンスであって、あの出し汁一つで全ての料理を作る、旨味の起伏を計算し尽くした会席料理の流れを作る事は出来ません。

TPOに合った出し汁を引く、醤油や酢を合わせる、事が出来るのが料理人です。

丁寧に引いた、鰹節の出し汁は、基本的に黄金色に輝きます、特定の飲食店の専売特許ではありませんので、念の為。

『二番出し』

一番出しを引いた鰹節を絞って鍋に入れて、水を入れて、アクを取りながら、グツグツ煮出します、煮出し加減はお好みで、出しは引くと言いますが、事、二番出しに限っては煮出すです。これが二番出しです。丼物や、巻き寿司の具を炊くのには最適です。二番出しです、お吸い物作ったりしたら、あきまへんで!

『鰹節と麹菌の話し』

鰹節がピンキリと言われる所以でもありますが、特上の鰹節と言われる『本枯節』は、仕上げに『鰹節菌』と言われる『カワキコウジカビ(ユーロティウム)、麹菌の一種』を表面に繁殖させて発酵熟成させて旨味を増幅させて産出されます、お値段もソレナリにしますし、本枯節だってピンキリなんです。一番出し汁の黄金の出し汁の、と言っても、鰹節も昆布もピンキリですし、料理屋なら鰹節も昆布も何種類かは持って置くものです。そして『料理の予算も考慮して、シチュエーションや用途に合った出し汁を引いて、調理する事が肝要』です。親子丼や惣菜に一番出し汁は、出し汁が繊細過ぎて合いません。何でもかんでも一番出し汁を使いますとか言ってる料理人がいたら、自ら知見の低さを知らしめてる様なものです。情報発信するなら正しい情報を発信すべきでしょう。

 

「一番出しで親子丼作る料理人の話を信用したらダメですね、(;^ω^)

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「黄金色に輝く出し汁」

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「二番だしを引く」

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鰹節(本枯節)と麹菌